リポートリポート

集中力に自己表現もスゴイ。中学生から教えられた「地域力」

フォレストデジタル株式会社(以下FD)での研修で与えられた課題は「1ヶ月間で町内の子どもたちを対象にした、うららパークを利用したプロジェクトを企画し、実行すること」というものでした。

 プロジェクト初日まで色々とあり(前回連載参照)、参加申し込みをしてくれたのは中学生4人。初日は新型コロナウイルスの影響による緊急事態宣言で、オンラインでの実施となりました。

 オンラインでの初日を迎えるにあたって、自身が進行役となり、当日の流れなどを計画していたものの、私には難点が。。。私自身、人前に立つことが苦手で、あがり症だったのです。準備の時に事細かなカンペ(もはや台本)を作ったことを覚えています。初回は全員の顔合わせということもあり、FDメンバーも全員が参加することになっていました。zoom画面を開き、FDメンバーとも挨拶した後、子どもたちが入室してくるまでの間にカンペを何度も読み直し、セリフを何度も音読しました。

 その数分後、子どもたちが入室してきました。

「大人耐性がすごい!」


 最初に入ってきたのは、2人組でした。入るなり、キャッキャッと楽しそうにはしゃいでいました。自分だったら、知らない大人たちとの初対面だし、zoomだし、とても緊張すると思います。しかし、彼女たちはそんな素振りも見せずに溌剌としていました。

 私の方が緊張していました。挨拶しなきゃ!と思い、意識的に元気良く「こんにちは〜!初めまして〜!」と言うと、

「ふふっ、こんにちは〜^^」となんとも思っていない様子で返事が返ってきて、少し私の緊張もほぐれました。その後も残りの2人が入室するなり、学校の会話の延長の話をしたりzoomの背景画面を “推し” に変えるなどして4人とも楽しそうにしていました。プロジェクトを今後進めていくことを考えると、この4人の仲が良くて安心しました。

「はい、時間になったので始めます!皆さん、こんにちは〜!」と言うと、画面に写っている全員が「こんにちは〜^^」と返してくれました。この後、うららパークについてやプロジェクトの概要、自己紹介などを行い、1日目が終了しました。

この時に私が1番感じたことは、子どもたちの慣れ感がすごいことです。大人の方が多い場で、今日やることも伝えられていない中で、質問をしても軽い自己紹介をお願いしても、困惑する様子なく、みんなスラスラと何事もなく対応してくれました。

 私は浦幌町に初めて来た時に、うらほろスタイル教育について知りました。小学校1年生の時から地域の大人たちとたくさんの交流をして、大人たちの前で自分の考えを発表する経験を多く積んできた今の中学生は、知らない大人を前にしても物怖じすることなく堂々とした態度で受け答えをします。小さな頃から大人と交流する機会が多いことが、このような場面で力を発揮してくるとは思ってもいなかったので、これが “地域力” の一つなのだろうかと驚かされました。

単純に「すげえな」

2日目。やっと中学生たちと直接会うことが出来ました。オンラインの時同様、子どもたちは溌剌として元気でした。そして、やはり大人との交流に慣れているので、すぐに打ち解けました。

 この日は、カメラの使い方レクチャーをした後に、子どもたち自身に映像の構成を考えてもらう時間にしました。みんなしっかりと話を聞く姿勢になるし、構成を考えてもらうワークシートを記入するときはすごい集中力で、iPadを使いこなしながら作業をしていました。ふと、自分は中学生の時にこんなに何かに集中して取り組んでいただろうか、こんなに大人とちゃんと接していただろうかと思いました。私の中学生時代は、人の話をろくに聞かないし、大人との関わり方が分からなくて接触を避けていた時期だったかなと思います。それをふと思い返すと、この子たちを見ていて、単純に「すげえな」の一言でした。この時、「この子たちはどんな大人になるのだろう」と考える楽しみが、私の中で一つ増えました。

NHKさんから取材を受けました

3日目。撮影日でした。中学生も私たちも、お互いにかなり打ち解けて世間話をする仲に。

「ここで皆さんに発表があります!」

「えー、なにー」

「今日は、NHKさんに取材されます!」

「えー!やだー!」

 さすがの中学生もテレビの取材は嫌だったのかもしれません(笑) でも「え、今日の私イケてるかな?」とスマホを鏡代わりにふざけている子も居たので、大丈夫そうです。

 いざ撮影がスタートし、楽しそうにしながらも真剣に撮影をしていました。撮影終了後、NHKさんによる個人インタビューがあり、直前まで嫌がっていた中学生もインタビューが始まるとスラスラと受け答えをしていて、本当にすごいなと思って見ていました。

でも実は、その裏でトラブルが起こっていました。撮影班を2班に分けていたうちの他メンバー担当の班が、1箇所目の撮影に気を取られて、事前に2箇所目の撮影場所でセッティングをして待機してくれていた協力者への遅刻連絡が滞ってしまっていたのです。予定時間に間に合わず、連絡もせずだったので、協力者に迷惑をかけてしまいました。そのトラブルを知ってすぐに謝罪をし、時間想定を甘く考えていたことや報連相を怠っていたことを反省しました。

4日目で新たに発見した中学生の特徴

4日目は編集作業でした。それぞれの班が撮影してきた素材を1つの映像にして、最終調整です。この日初めてスクリーンに投影し、「おぉ〜」「すげ〜」という声が漏れていました。映像を1度見てから「何か気づいた所とか気になった所はある?」と聞くと、「このシーンが切り替わる直前に人が映り込んじゃったから、そこを切り取れないかな?」「こういう音入れたらもっと良くなりそう!」など色々アイディアが出てきます。

 その後は、最終日に向けた準備。最終日となる5日目は、保護者や中学校の先生をお呼びして、子どもたちの完成作品の発表会をします。そこではただ映像を流すだけではなく、子どもたち自身が「映像を通して何を伝えたいか」「何を “想像して形に” したのか」を見ている人たちに伝えるために、想いの発表をしてもらうことも課題としました。みんなで楽しそうにおしゃべりしながらも、今まで書いてきたワークシートを確認しながら発表内容を詰めていきました。

 「え〜なんて書けば良いの〜?」と言いながらもワークシートに取り組む中学生を見て、新たに気づいたことがあります。「この子たち、自己表現を沢山するな」と。大人との関わりに慣れているから、というのがあると思いますが、その時の自分の気持ちや考えを素直に表に出すことが中学生の中でも多い方なのでは?と感じました。そして、大人がワークシートを覗いても隠したり気にしたりすることなく、「どうぞ見てください」と言わんばかりに堂々と取り組みを続けていました。それだけ地域の大人を信用しているのでしょうか。このような姿勢である本当の要因は分かりませんが、自分の中学生時代とは明らかに良い方に異なる点だと思います。

「できた!」

いよいよ残すは発表だけです。

次回に続く

この連載について

現在は、毎日のように子どもたちとふれあい、その言動に考えさせられたり励まされたりしている私が子どもたちとのリアルな浦幌での暮らしをご紹介します。

著者紹介

(続 麻知子)

1998年札幌生まれ。国語科教員を目指し、筑波大学日本語・日本文化学類に入学。大学では国内・海外問わず様々な地域に赴き、その地域の歴史や暮らし、人々の関係性を調査することで、自身の環境を振り返る機会となった。大学卒業後、浦幌町地域おこし協力隊に就任し、十勝うらほろ樂舎ヤングフェローとして浦幌町に関わる子どもたちや若者と共に「たくましく生き抜く力」を身につけ、次世代を主体とした地域づくりを目指している。

浦幌町に来て、町の方々の生の声から学ぶことがとても多いです!一緒に悩み考えながら地域づくりに関わっていきたいと思っています!

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