リポートリポート

このプロジェクトで気づいたこと

映像制作プロジェクトも最終日を迎えました。保護者や中学校の先生をお呼びし、中学生の完成作品の発表を行います。中学生も緊張していましたが、私も負けないくらいの緊張をしていました。この日は、私にとっても初めて保護者の方や先生方の前で進行・発表をする日だったからです。

 発表会の時間が迫る中、私たちは発表会の最終確認をしました。

「まず、まっちがスライドを使って今までの取り組み内容を発表します。それでまっちがこのフレーズを言ったら、Aチームの2人は前のここに出てきて発表してね!」

「はーい」


 開始まであと3分。私は自身が発表するスライドを確認しながら、話すことのイメージトレーニングをします。中学生も「あー!やだ!緊張するー!」と発表資料をパタパタしながら慌てていたり、必死に発表資料を読み込んでいたり。

 そして、発表会の時間になりました。

子どもたちの発表とそこから感じたこと


 私から簡潔に、このプロジェクトが発足した目的やこれまでの流れを、来ていただいた方々に説明し、Aチームの出番が来ました。

 Aチームは「キャンプで見つける大自然」をテーマに映像制作をしていました。「自然の良さを知ってほしい」「忙しい人たちに少しでもリラックスしてほしい」という想いが込められた映像では、鳥の鳴き声が響くキャンプ場で燃えている、焚き火の映像が印象的でした。

「活動を通して見つけた新たな発見は、自分達が毎日見ている景色でも、見る方向を変えれば見たことないものが見えることです」

次にBチームの発表です。Bチームは「上浦幌の景色」をテーマにした映像でした。映像の中では、酪農の牧場で放牧されている牛を撮影したり、川の流れを撮影したり。1回目の編集の時点では消していた、牛にカメラを倒された後の、牛に踏まれそうな瞬間を採用し、映像を見ていた大人からは「おぉ〜」「この視点面白いね!」という声が上がっていました。

 子どもたち自身、普段は浦幌町の中でも市街に住んでいるので、撮影した牛や移動途中で見かけたカラスやキツネの多さに驚いたことを話していました。

子どもたちの発表を聞きながら、今回のプロジェクトは「想いをカタチに」することを目的としていましたが、普段見えているものを別視点から見た時の発見にもこのプロジェクトをやる意義があるのではないかと感じました。

  子どもたちの発表を聞いた保護者の方や学校の先生からの質疑応答も終了し、無事に発表会が終了しました。緊張がほぐれた中学生たちも笑顔で帰っていき、保護者の方にも「ありがとうございました」と言われました。これでプロジェクト自体は終了です。私自身も「あぁ、終わったな」と今まで張り詰めていたものが緩んだ感じがしました。

今も自分が大切にしていること

翌日、FDメンバー内で、研修生によるまとめ発表を行いました。私は、企画してから人を集めることの大変さや、企画自体に協力いただく方との調整の難しさ、中学生や地域の大人から学んだことなど、この研修を通した発見について発表しました。FDメンバーからは「プレゼンテーション資料も初めから見たらすごく上手になったし、調整とか難しかったかもしれないけど、プロジェクト自体大成功で終わったから本当によく頑張ったと思います!約2ヶ月間おつかれさまでした!」と言っていただきました。

 正直、このコメントをいただいてとても驚きました。プロジェクトが終わるまでは、常に心のどこかで苦しさを感じていました。いつも必死で考えを巡らせても、厳しいフィードバックが続いて、何をするにしても「本当にこれで良いのだろうか」「自分って本当に何も出来ないな」という気持ちになっていたからだと思います。ですが研修最終日、FDメンバーは自分が自信なくやっていたことも、自分自身でもあまり意識を向けていなかったことも、研修序盤の私よりも成長したところを全て取り上げて認めてくださいました。「研修受けられてよかった。辛くて逃げ出したくなった時も沢山あったけど粘り続けてよかった」と思った瞬間でした。

 この経験があり、私自身も他者を認めることを意識しています。そして研修初日に言われた「“How” じゃなくて“Why” を考えるように」という考えも私の財産になりました。何かにチャレンジをする中で、続けていくうちに目の前のタスクをこなすことがゴールになってしまう時が多々あります。それは故意にしているのではなく、無意識的になってしまっているのです。でも、「なぜ今それをしているのか?」と立ち返る機会を増やすことで、やらなければならないことを精査したり、苦しくなっても「今、目の前にあるタスクは、目指しているところに到達するために必要な過程だ」と自分を鼓舞することが出来ていると思います。全部が全部出来ているわけではありませんが笑

 このような2ヶ月間のFD研修で学びを得た私は、十勝うらほろ樂舎に戻り、また新たな発見と悩みを経験していきます。次回連載でまたお付き合いいただければ幸いです。

この連載について

現在は、毎日のように子どもたちとふれあい、その言動に考えさせられたり励まされたりしている私が子どもたちとのリアルな浦幌での暮らしをご紹介します。

著者紹介

(続 麻知子)

1998年札幌生まれ。国語科教員を目指し、筑波大学日本語・日本文化学類に入学。大学では国内・海外問わず様々な地域に赴き、その地域の歴史や暮らし、人々の関係性を調査することで、自身の環境を振り返る機会となった。大学卒業後、浦幌町地域おこし協力隊に就任し、十勝うらほろ樂舎ヤングフェローとして浦幌町に関わる子どもたちや若者と共に「たくましく生き抜く力」を身につけ、次世代を主体とした地域づくりを目指している。

浦幌町に来て、町の方々の生の声から学ぶことがとても多いです!一緒に悩み考えながら地域づくりに関わっていきたいと思っています!

意外な一面
これはここだけの話だが、自分自身やろうと思えば何でも出来ると思っている。そして負けず嫌いな一面も。学生時代に教員を目指していたのには、当時苦手意識を持っていた先生を、自分が素敵な先生になって見返してやろうという気持ちが結構強かったということはあまり公表していない。

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