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「行動力よりも、考動力」

このコラムは、「スポーツでの学びは社会に通づる」と考えている筆者が、筆者の感覚でスポーツで起きることを社会での出来事に捉えたり、社会の出来事をスポーツで捉えたりするコラムです。スポーツの価値が少しでも読者の皆様に伝わりましたら幸いです。

自分の武器が通用しない?高校で直面した「行動力の限界」

高校サッカーで、一番の悩みは自分の武器が通用しなかったことでした。ドリブルやパスを駆使し、独自のリズムで展開するスタイルのサッカーに対し、私はサイドバックで、武器は両足のロングキックでした(そもそも武器と言えるほどのキックだったのかという前提はあります(笑))。中学時代は速い攻撃スタイルだったので、ロングボールを多用するスタイルでしたが、高校はボールを保持することを、チームとして大切にしていたので、攻撃スピードは速いものの、ボールを失いやすいロングキックはスタイルに適していませんでした。

なので、よく「失うからやめろ!」と言われました(笑)。私はタイミングが違うのか、場所が違うのか、そもそもロングボールを使わないほうがいいのかを理解していませんでした。それでもこの武器を有効活用するために、何度もロングボールを蹴っていました。シチュエーションを変えたり、タイミングをずらしてみたり…とにかくやってみました。けれど、監督やコーチに褒めてもらえることはあまりなく、うーん…というような表情をいつもされていたのをよく覚えています。

ちょっとの意識で変わる。問うこと、考えることの重要性

高校2年生になると、自分の同学年の仲間が試合に出始めました。出る選手の特徴はいずれもボールを大事にする技術やテクニックを兼ね備えている選手でした。そこで初めて気づいたのです。そもそも自分のロングボールの使い方を、このチームは求めてないんじゃないか?と。(気づくのが遅すぎますが…)

 そこで、この武器をチームにどう生かすかではなくて、このチームが求めているスタイルに自分はどうフィットして、さらにその上で既存の武器をどう生かすか。このチームはどのような選手を求めているか。根本を疑ったのです。そこからは、まず、部活後に同じグランドで練習している中学生と一緒にドリブルの技術を磨きました。今まではDFラインからFWまでの縦の長いロングボールを蹴っていましたが、ドリブルを磨きながら、自分や仲間と連携し、前線でのロングボール(センタリング)に切り替えました。

そうすると、ドリブルには苦戦するものの、今まで以上にチャンスメイクができるようになったのです。

 振り返ると、前半が行動で、後半が考動だと思います。ただ、やみくもにアクションを重ねるのではなく、目的と手段を考えながらアクションすることが大切であると学びました。

これは社会でも同じことが言えると思います。また、武器の考え方もです。

”自分の長所をどうチームに生かすか”を考えるのも重要ですが、視点を変えて”この組織はどのような人を求めていて、何を必要としているのか”を考えた上で、自分としてどう貢献するか、関わるかを考える。その上で自分の長所をどう表現するかを考えることのほうが、組織にとっても自分にとってもいい関わり方だと思います。組織と個人という視点を行き来することは、スポーツから学べることの一つなのではないかと思います。

とは言いつつ、よく手段と目的を勘違いする越膳でした。

この連載について

「スポーツでの学びは社会に通づる」と考えている筆者が、筆者の感覚でスポーツで起きることを社会での出来事に捉えたり、社会の出来事をスポーツで捉えたりするコラムです。スポーツの価値が少しでも読者の皆様に伝わりましたら幸いです。

著者紹介

(越膳 慧太)

静岡県出身、北海道教育大学釧路校に進学。地域とともにある学校という視点で教育を学ぶ。授業を通して出会った浦幌町に飛び込むことが、自分の想いを形にするために必要な経験だと考え、大学卒業後、地域おこし協力隊として十勝うらほろ樂舎に勤める。現在はワークキャンプ事業と高校から感じていたスポーツを入り口に子どもたちの未来をよりよくするためのスポーツプロジェクトにチャレンジ中。

意外な一面
地元沼津市で活動しているお笑い手品芸人「おのちゃんマン」の一番弟子。人を笑顔にすることなどは師匠からいただいた可能性が大きい。
「おのちゃんマン」は会社の社長の傍ら芸人をしており、「笑い療法士2級」を持ち、保育園からイベント、結婚式福祉施設、被災地でも“手品“を通し、笑顔を届けている。

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