リポートリポート

あの日の約束

 2023年3月29日。この日は離任式でした。今年度でその学校を去る先生方と、児童や職員、保護者の方々とで行うお別れの式です。私にとってその日は、これまでの異動と違い、15年間勤めた教職を離れる日でもありました。

 「先生、なんで辞めちゃうの?」子供たち、保護者の方、職員の方からもたくさん聞かれました。理由は一つではないけれど、学校が嫌いになったから、教職が嫌になったからではないということだけは伝えたいと思っていました。

教員ってすてきな仕事です。

 各家庭から命を預かるので責任は大きく、本気で子供たちと向き合う覚悟が必要です。大変な時はもちろんあります。けれど、大変だからこそ、教職にしかない魅力もたくさんあります。一生懸命に生きている子供たちをそばで見守れること。自分の技量をあげれば、たった1時間の授業でも子供を伸ばす手助けができること。本気で笑ったり、怒ったり、泣いたりできること。子供たちの生き方に関われること。同僚の先生方と力を合わせて、様々な行事や課題を乗り越えていけること。大人も共に支え合い、助け合えること。ここには書ききれないほどの素敵な瞬間が、心に深く刺さる出来事が、教育に関わる大人たちには返っていきます。

 白状すると「やめなきゃよかった」と思ってしまったこと、ありました。

 でも、今の私は辞めたことを後悔しながら毎日を過ごしているというわけではありません。私の様子から、樂舎メンバーや私に関わってくださる方にはそれが分かっていただけるかと思います。浦幌に来たからこそできることがある。学校現場を離れたからこそ気付けたことがある。たくさんの出会いの中で、日々学びながら「うらほろいちねんせい」を頑張っています!

 冒頭で述べた離任式の挨拶では、こんな風に話しました。

 

「私の夢は、小学校の先生になることでした。夢を叶えることができて、たくさんの子どもたちや保護者の方々、先生方に出会えて幸せでした。私は、学校という場が好きです。毎日頑張るみんなの顔を見ているのが好きです。そんなみんなを見ていて、パワーをもらい、私も新しい場所で、新しいことに挑戦したくなりました。だから、先生を辞めることにしました。学校が嫌いになったわけではありません。みんなのことが嫌いになったわけではありません。大好きなみんなに勇気をもらったから辞めます。」

 これが「先生、なんで辞めちゃうの?」の「答え」でした。

 それと同時に、新しいチャレンジに対して弱気になりそうなとき、「自分で言ったんでしょ、自分で決めたんでしょ。あの子たちに宣言したじゃない。」と私を励ましてくれる「約束」でもあります。

 毎日新しい1日を生きている子供たち同様、大人だって新しい1日。成長のスピードも質も負けないぞ!と日々奮闘中の「わたし」が今の「わたし」です。でも時には過去の「わたし」を思い出しながら今の自分をうじうじと悩むこともあります。それもまぎれもなく「わたし」。他にもいろんな「わたし」がいます。そんな「わたし」を往ったり来たりしながら、それでも一歩一歩進んでいく様子をお伝え出来たらなあと思っています。そして、誰かの心に少しでも届いたらいいな。今、そう考えています。

この連載について

15年勤めた教員を辞め、浦幌に飛び込んだ私が、時々後ろを振り返りながらも前に進んでいく様子をご紹介します。

著者紹介

(杉浦由記)

1986年広島県生まれ。10歳の時に、千葉県浦安市へ。
小学生の頃から、行事が好きで、仲間と共に何かを企画・運営することに夢中になった。
その経験から、小学校の教員を目指し、免許を取得。
東京都江戸川区、千葉県習志野市、市原市で15年間小学校の教員として働く。
教師として働く中で生まれた「本当に子どものためになる教育とは」「自分らしく働くとは」といった問いをもつように。
自問自答していたタイミングと、十勝うらほろ樂舎との出会いが重なり、2023年5月から浦幌へ。
現在は、自分自身の人間としての力を鍛えなおしながら、教育やスポーツを中心にたくましく豊かな人づくりに貢献できるよう奮闘している。
「出会いは必然」「思っていることは行動に表す」「人を大切にする」をモットーに頑張ります!

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