リポートリポート

「わたしはどこで生きていくの?」この問いに、浦幌が教えてくれたこと

わたしの「どこで生きていくんだ問題」

前回、教師を辞める理由は一つではない、と書きました。理由のうちの一つが「どこで生きていく?」です。年齢で決まるわけではないと分かってはいるものの、周囲の「家を建てた」とか「土地を探している」という話が気になるお年頃。その度に思っていました。「みんなは、どうやってここに住むぞっていう決心をしているのだろう。分からない」もやもやと悩んでいました。

 私は、広島県で生まれ、幼少期を過ごしました。(おかげで母国語は広島弁です。)その後千葉県に引っ越しました。中学は地元の公立に行きましたが、高校は隣の学区まで通っていました。大学は東京にあったので一人暮らしもしました。就職してから3つの学校に赴任しましたが、地域はばらばら。同じ管轄内での異動が多い千葉県の教員の中では、めずらしい異動の仕方だったと思います。転機を迎えるたびに住む場所、過ごす土地が変わり、新しい環境の中でやってくることが多くありました。それゆえ、「ここが私の場所」という土地を決めきれずにいました。

十勝への旅 「うらほろ」との出会い

令和元年に変わる長いゴールデンウィークに、私は北海道キャンプ旅をしました。北海道の自然のスケールは桁違いで、キャンプ場の快適さにも魅了されました。函館、洞爺湖、十勝、知床と北海道を横断した中でも特に十勝は広々としてまさに北海道そのものだと感じました。「こういうところに住んだら気持ちよさそうだな」漠然とそう思っていました。

 この経験があり、「どこで生きていくんだ問題」を考えた時に候補に挙がった地域が十勝です。十勝の市町村を知りたい。そこで、再びキャンプ道具を積んで、北海道を訪れました。十勝管内の市町村に入る度に「お・び・ひ・ろ・し」などと検索して、人口や行政のしくみ、特徴などを調べながら車を走らせていました。そうして出会ったのが浦幌町です。

 「う・ら・ほ・ろ」と検索した中に、「十勝うらほろ樂舎」の名前がありました。調べてみてすぐに面白そうな事業や働き方をしている事が分かり、興味を持ちました。また、これまで過ごしてきた地域には海があることが多かったので、海沿いに位置する浦幌町に親しみを感じていました。穏やかな空気が流れる町の雰囲気も落ち着くなと思いました。

 旅を終え自宅に戻ったその日も、私の「十勝うらほろ樂舎」調べは続いていました。その時、偶然にもオンライン就職イベントのお知らせを目にしました。しかも、実施は(たしか)その日の夜。「これはご縁かもしれない」と勢いで申し込み、そのまま参加し、アンケートで「興味がある」と応えてから1年後の5月。浦幌町にいました。

浦幌町が教えてくれた

 誰ともつながりなく来た私が、職場で共に働く仲間とある時は議論を交わし、またある時は談笑する。町を歩けばすれ違った人と挨拶し、「寒くなってきたね」と会話を交わす。よっこ」「ぼっこ」の意味も分かってきたし、タンチョウヅルやキツネにもそれほど驚かなくなった。鹿に気を付けながらの運転もできるように……。

 少しずつつながりが生まれて、浦幌町に慣れてきました。いいえ。正確には、浦幌町の人々が私を「慣れさせてくれた」。浦幌町に住んで半年。正直にいうと「ここが私の生きていく土地だ」という実感はありませんが、今の私にとって「ここが私の場所」なのです。

 浦幌町や北海道の自然には感動することばかりです。水平線の広がる昆布刈石展望台の景色や、留真温泉で癒されること、おいしい食べ物たち、寒くなってよりわかる満天の星空の美しさ。どれも素晴らしい!一方で、これまで暮らしてきた広島の穏やかな瀬戸内海の表情もお好み焼きも、千葉の田んぼの中を小湊鉄道がとことこ走る姿も市原市の梨もやはり大好きです。

 大好きなのは環境だけではありません。そこで暮らす家族や友達、仲間たちも同様です。たくさんの出会いがあり、別れもあり、嬉しいこともつらいこともありました。でもその一つひとつが私にとって大事なものです。

 私は、浦幌町に来て気付きました。

「転々としてきて地元がないのではなく、大好きな土地とゆかりのある人々を増やしてきたのか。それは私の強みかな」

「どの場所でもたくさんの必然があったなあ。どの経験も私に必要だった」

「どこで生きていくかは『どこ』で暮らすかだけでなく、『だれ』と『どのように』暮らすかで決まってくるのかなあ」

 わたしの「どこで生きていく?」の問いは、「どうやって生きていく?」に変わりつつあります。自然も人も含めた、オール浦幌町に教わったことです。

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この連載について

15年勤めた教員を辞め、浦幌に飛び込んだ私が、時々後ろを振り返りながらも前に進んでいく様子をご紹介します。

著者紹介

(杉浦由記)

1986年広島県生まれ。10歳の時に、千葉県浦安市へ。
小学生の頃から、行事が好きで、仲間と共に何かを企画・運営することに夢中になった。
その経験から、小学校の教員を目指し、免許を取得。
東京都江戸川区、千葉県習志野市、市原市で15年間小学校の教員として働く。
教師として働く中で生まれた「本当に子どものためになる教育とは」「自分らしく働くとは」といった問いをもつように。
自問自答していたタイミングと、十勝うらほろ樂舎との出会いが重なり、2023年5月から浦幌へ。
現在は、自分自身の人間としての力を鍛えなおしながら、教育やスポーツを中心にたくましく豊かな人づくりに貢献できるよう奮闘している。
「出会いは必然」「思っていることは行動に表す」「人を大切にする」をモットーに頑張ります!

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