リポートリポート

浦幌で実施する「アグリダイブプログラム」とは?

全国から集った学生が「昼は芋掘り、夜は自分掘り」をする姿を見て

浦幌町に移住してまもなく5年目となる。札幌市で過ごしていた学生時代よりも気付けば長い期間いることになる。この4年間、年代も職種も様々な人たちと出会った。特に、浦幌町という街に来て、第一次産業に関わる方々の偉大さを知った。命と関わること、人間のコントロール外にある存在と向き合う中で、その都度、「自分は生かされている」という当たり前の事実を再認識し、人生観を新たにしている。

 本連載「農業と対話で”わたし”が変わる9日間」は今年(2023年)の3月9日〜17日に開催した「北海道十勝うらほろアグリダイブプログラム」での出来事を紹介していく。これは全国の大学生を対象に、文化・価値観などを次世代に繋ぐことを意識して活動をする浦幌の農業者・経営者らと共同作業をメインに据えたプログラムである。連載2回目である今回は、なぜアグリプログラムを浦幌で実施することになったのか、その経緯や想いについて書いていきたい。

いま(2023年4月)をさかのぼること約6カ月前、私は北海道十勝の帯広市にある、とある農家さんの畑にいた。帯広市で開催された2週間程度の期間の同様のアグリプログラムに声をかけていただき、初めて当日の運営を担うコーディネーターの立場として参加したのだ。

全国から23名の学生が集まり、昼間はじゃがいもの収穫作業などに関わった。学生たちは農作業には1つひとつの作業に意味があり、すべてが最終消費者と繋がっていることをはじめて知った。単純作業になってしまわないようにする現場の工夫などにも触れ、まさに机上では学べないことを土と触れながら学んでいく学生たちの姿を見てきた。

夜は農作業やこの地での暮らしで学んだこと、今後のキャリアなどについて、受け入れてくれた農家さん(受け入れ農家)と一緒に話をした。そこでは、学生たちが、農家さん、他の参加学生に対して様々な想い・葛藤する心情を打ち明ける場面もあった。

 

忙しい農家さんたちが学生を受け入れたのは「彼ら彼女らの未来のために何かできないか、と思ってのことなんだよ」と、一緒に食事に連れてってくれた時にそっと教えてくれた。最終日には、そんな農家さんたちへの敬意や感謝の気持ちからか、号泣をする学生の姿があった。

次世代の子ども・若者のために活動をしている浦幌でも、やってみたい


「次世代の子ども・若者のための活動をし続けている浦幌町でもやってみたい」

「自身が暮らしている浦幌という土地でなら、学生・農家さんにとってもより丁寧な伴走ができるかもしれない」

「浦幌の農家さんでも人手不足に困り、もっと農業に多様な人が関わって欲しいと話していた方もいた。自分が住む街にとっても必要なプログラムなのかもしれない」

直感的にそんな想いを持ち帰り、2週間の現場を終えた。

その時から約半年が過ぎ、地元の農家さんとの関わりの中で、今年3月に浦幌町でも初めて実施をすることとなった。

若者が集い始める浦幌で、次世代の子ども・若者のための活動を長年行なってきた浦幌町で、プログラムを実施した先には、どんな未来が描けるだろう。とてもわくわくしている。

この連載について

この連載では、浦幌で大学生が学ぶこのプログラムの実施過程で、私を含めた若者が生き生きと学び活動する姿や、その中での気付き、浦幌という次世代に繋ぐ活動を続けてきた町の「学びや挑戦のフィールドとしての可能性」を書いていきたい。どうかよろしくお願いいたします。

著者紹介

(古賀 詠風)こが えいふう

1996年北海道遠軽町生まれ。北海道大学教育学部で地域での教育や社会教育を学ぶ傍ら、「カタリバ」という対話的活動で高校生への授業運営と大学生への研修を担当。在学中、浦幌町の次世代を想う姿勢に惚れ、大学卒業後の2019 年より浦幌町地域おこし協力隊うらほろスタイル担当として移住。町の中高生が行う地域を舞台とした活動団体「浦幌部」のサポートや社会教育の場づくりなどを行う。3年の任期を終え、事業を連携して行っていた「十勝うらほろ樂舎」に2022年4月より入社。
古家具や器が好き。好みのものに出会うと「かわいい」しか語彙が無くなる。今年は陶器窯に行ってみたい。

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