リポートリポート

浦幌でアグリダイブプログラムを実施しました!〜農作業編〜

全国から7名の大学生が浦幌に来町!農作業に奮闘しました

 浦幌町で実施したアグリダイブプログラム。参加した大学生の多くが農作業未経験者であった。そんな大学生たちが浦幌町にきて、ちょっと見学や体験を行う「農業体験」ではなく、朝から夕方までの「農作業」を行った。初めての地域、初めての作業、初めて尽くしの9日間、受入農家さんたちに助けていただきながら本気で農業と、農作業と向き合い続けてきた大学生たちの姿があった。

 本連載「農業と対話で”わたし”が変わる9日間」は今年(2023年)の3月9日〜17日に開催した「北海道十勝うらほろアグリダイブプログラム」での出来事を紹介していく。これは全国の大学生を対象に、子どもや若者などの「次世代」に繋ぐことを意識して活動をする農業者や経営者らと対話と、農作業をメインに据えたプログラムである。連載3回目である今回は、浦幌で実施したアグリダイブプログラムの2つの柱のうちの1つである「農作業」について書いていきたい。

今回、「共栄甜菜播種センター組合」に受け入れていただいた。大学生たちはここで、朝7時から17時までは砂糖の原料となる「ビート」(別名を「てんさい(甜菜)」または「砂糖大根」という)のポットづくりという作業をした。

初開催のプログラムを受け入れしてくださった農家さんたち

普段当たり前のように大量に消費している「砂糖」。それが私たちの口に入るまでどのような過程を経て、どのような人たちが関わって行われているのか、これまで見たことがなかった。

 今回初めて受け入れていただいた共栄甜菜播種センター組合は、浦幌町の農家さんが複数軒集まり運営されている。国内で自給されている砂糖のうち、北海道で生産されるビートを原料とした砂糖が約8割を占めているという。その中でも、浦幌が属する十勝はビートの一大生産地の一つである。今回は、そうしたビートの「ポットづくり」、種をそのまま畑にまかずに生育を行っていくための苗床をつくる作業を行った。

 初開催にもかかわらず、今回7名も受け入れていただいた共栄甜菜播種センター組合の皆さんとは、11月下旬に大学生たちが農作業をする場所に伺った際に出会った。そこから何度かやりとりを重ね、詳細の内容や日程を決めていった。やりとりの中で、日本の食を支える大事な産業でありそれは「ポット作り」を含めた地道な作業で成り立っていること、農作業のためだけではなく浦幌や学生の未来を想い受け入れようとしていることを知った。

 浦幌町に移住をして5年目になるが、まだまだこの地域には知らないことがたくさんあることを痛感した。そして何より、地域を支えてきて、これからの未来をより良くしようとしている人たちの存在を新たに知ることができた。

受け入れていただいた「共栄甜菜播種センター組合」の皆さん

浦幌の農家さんと大学生が出会い、語る

「この方たちと初開催を迎えたい」

 そう思い迎えたアグリダイブプログラム本番。大学生たちは滞在した9日間のうち6日間の7:00〜17:00の間で農家さんたちとビートのポットづくりの作業に関わった。

 機械の大きな音が響く中で行われる、一見繰り返しに見える作業。序盤は大変そうな表情を見せていた学生たちだったが、繰り返しの作業を「つらい」で終わらせずに、その中でのやりがいを見つけていた。途中の農家さんと時間をとって対話をする機会を経た後は、いただいた本気のフィードバックをすぐに我が物として行動を変えていく適応力を目の当たりにした。

 大学生が新しい知恵や考えをどんどん吸収する姿には、農家さんたちも、そしてプログラムを運営する私も驚かされてばかりだった。

農家さんたちは、作業に関する声がけだけではなく、学生一人ひとりをしっかり見てそれぞれのことを想い言葉を贈ってくださった。その暖かさ、真摯に人と向き合い相手を受け入れようとする姿勢、この地で活動していく想いに触れ、心揺れ動いた大学生たちは涙ながらに「また浦幌に来たい」「浦幌の人みたいな人間になりたい」と言ってくれた。

 最終日には、受け入れをしてくださった農家さんが「何年も働いてきた中で一番楽しかった」「自分たちももっと頑張っていかなきゃと思った」とそう言ってくださった。貪欲に学び懸命に働く学生たちの姿は、農家さんたちや場の雰囲気にとっても大事な存在となっていたようだった。学生たちは心の底から喜んでいたし、私も嬉しさのあまりうるうるときてしまった。 

最終日の別れの時には、泣き笑いまた会う約束をする学生とそれに応える農家さんたちの姿があった。

 実はこの夏もまた、アグリダイブプログラムを開催予定だ。3月に受け入れていただいた際に、作業のお手伝いとして来ていた農家さんが学生たちの姿を見て「ぜひうちでも受け入れたい」とお声がけいただき、実施する運びとなった。そのプログラムに合わせて、3月に参加していた大学生も再び浦幌に来ることになりそうで、本当にとても楽しみである。

 若者が集い始める浦幌で、次世代の子ども・若者のための活動を長年行なってきた浦幌町で、プログラムを実施した先には、農家さんと学生が人と人として関わり合う関係性が生まれる未来があった。その関係性がさらに繋がり、夏には一体どのような光景が生まれるのか、とてもわくわくしている。

この連載について

この連載では、浦幌で大学生が学ぶこのプログラムの実施過程で、私を含めた若者が生き生きと学び活動する姿や、その中での気付き、浦幌という次世代に繋ぐ活動を続けてきた町の「学びや挑戦のフィールドとしての可能性」を書いていきたい。どうかよろしくお願いいたします。

著者紹介

(古賀 詠風)こが えいふう

1996年北海道遠軽町生まれ。北海道大学教育学部で地域での教育や社会教育を学ぶ傍ら、「カタリバ」という対話的活動で高校生への授業運営と大学生への研修を担当。在学中、浦幌町の次世代を想う姿勢に惚れ、大学卒業後の2019 年より浦幌町地域おこし協力隊うらほろスタイル担当として移住。町の中高生が行う地域を舞台とした活動団体「浦幌部」のサポートや社会教育の場づくりなどを行う。3年の任期を終え、事業を連携して行っていた「十勝うらほろ樂舎」に2022年4月より入社。
古家具や器が好き。好みのものに出会うと「かわいい」しか語彙が無くなる。今年は陶器窯に行ってみたい。

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