リポートリポート

大学生たちのはたらきが次につながる

浦幌町で初開催した農業インターンシッププログラム。大学生が浦幌にきて、昼は農作業、夜は地域の大人との対話を繰り広げた9日間。その後浦幌町では、新しい動きが起きようとしていた。

 本連載「農業と対話で”わたし”が変わる9日間」は今年(2023年)の3月9日〜17日に開催した「北海道十勝うらほろアグリダイブプログラム」での出来事を紹介した。これは全国の大学生を対象に、子どもや若者などの「次世代」に繋ぐことを意識して活動をする農業者や経営者らとの対話と、農作業をメインに据えたプログラムである。連載5回目である今回は、浦幌で3月に実施したアグリダイブプログラムを経て、新たに起きた動きについて書いていきたい。

想いを伝えてくださった農家さんと

 


 今回のプログラムでは、共栄甜菜播種センター組合という農家さんの組合に大学生の受け入れをしていただいていた。日中はそこに属する農家さんたちとともに、大学生たちも農作業をしていた。また、大学生だけではなく、北海道の冬の農閑期などの事情で他の農家さんでも働きに来ている方もいた。実は8月30日から実施予定の夏季のアグリダイブプログラムでは、そのうちの一人の農家さんが新たに受け入れを希望してくださったことで、実施に至ったのである。

 農業はほぼ素人の大学生たち。初めての作業で最初はプロから見たら効率も悪かったところもあっただろうが、農家さんたちに教わりながら、改善しようと日々懸命に働いた。最終日には、「何年も働いてきた中で一番楽しかった」「自分たちももっと頑張っていかなきゃと思った」と受入農家さんが言ってくださるようになっていた。そうした姿を見て、「うちでも受け入れたい」と声をかけてくださったのだ。

 声をかけてくれた農家さんは名前は聞いたことがあったがそれまで面識がなかった。面識がない中でも大学生たちの頑張りを見て、声をかけてくれた。起点がさまざまに次の動きにつながったことが、本当に嬉しかった。

 プログラム終了後の4月、初めて声をかけてくれた農家さんの農場に伺った。農場を見学させていただいた後、声をかけてくださった農家さんと、経営者でもあるお父さんと話をした。農場経営に対しての想い、これまでの受け入れなどの状況などの農業・農場に関わることに加えて、十勝うらほろ樂舎への正直なアドバイスもいただいた。もっと地域の農家さんたちと連携して、きちんと役に立つ形でできることはあるのではないか、そうしたことを実感・反省した訪問となった。

 そこから何度もやりとりや訪問を重ね、8月の開催に向けて企画を進めている。8月30日〜9月10日に行われる今回のアグリダイブプログラムも、農家さん・大学生・地域にとっても充実した場になるように進めていきたい。

 また、準備を進めていた矢先に、思わぬ嬉しい出来事があった。浦幌町と関わりのあった北海道大学大学院農学研究室の小林先生から連絡があり、大学院生が農業実習と地域の人との交流を通して、研究室だけでは学べない農業のリアルを体感できる機会を作りたいということで、講義として3泊4日浦幌町での受け入れをさせていただけることになったのだ。

 当日のスケジュールを組み始めた時、今回受入農家さんの1人として、この農家さんのところで農作業をできないかと思い立った。未熟な僕らに想いを伝えてくださったこの方に恩も返したいし、ここで大学院生たちに農業を、浦幌を感じてほしい。そう思い電話をしたら、快諾してくださった。

 

 
 先日、6月26日〜29日まで大学院生9名が浦幌町に来町した。そして、浦幌町内でのさまざまな農場に足を運んだひとつの場所が、この農場だった。6月28日、大学生たちは朝から晩までこの農場でブロッコリーの播種や選果に関わる作業をした。帰ってきた時の学生たちは疲れもあったが、とても充実していそうな顔つきをしていた。

帰宅した大学生たちの手にはブロッコリーが握りしめられていた。大学生たちの頑張りに対して、農家さんがおすそわけしてくださったのだ。大学生たちはすぐにその日調理をして、農家さんがこだわって栽培しているブロッコリーを食べた。本当に美味しそうに食べて、その日中に完食をしていた。自分もいただいたのだが、料理としてもとても美味しかったし、茹でるだけというシンプルな食べ方でもブロッコリーの味を今までで一番感じられた。思わず何個も食べてしまった。


「今日は本当に助かりました。学生達も一生懸命頑張ってくれました。」

 受け入れ後、学生たちが調理をしている時間帯に、農家さんがそんなメッセージを送ってくれた。その後に電話もして話していた言葉を聞いて、大学生たちの姿も見て、ここで受け入れていただいて本当によかったと実感をしている。

 アグリダイブプログラムはこの夏もまた開催を予定している。8月30日〜9月10日の期間で実施するプログラムでは、今回紹介させていただいた農家さんも受入農家さんの一人として関わってくださる予定である。農家さんも「受け入れてよかった」、学生も「きてよかった」と思えるプログラムにするべく、企画を進めている。

 今後も浦幌町でこうしたプログラムをより進めていく。少しでも興味のある学生、地域の方などいましたら、ぜひ声をかけていただけると嬉しいです。

この連載について

この連載では、浦幌で大学生が学ぶこのプログラムの実施過程で、私を含めた若者が生き生きと学び活動する姿や、その中での気付き、浦幌という次世代に繋ぐ活動を続けてきた町の「学びや挑戦のフィールドとしての可能性」を書いていきたい。どうかよろしくお願いいたします。

著者紹介

(古賀 詠風)こが えいふう

1996年北海道遠軽町生まれ。北海道大学教育学部で地域での教育や社会教育を学ぶ傍ら、「カタリバ」という対話的活動で高校生への授業運営と大学生への研修を担当。在学中、浦幌町の次世代を想う姿勢に惚れ、大学卒業後の2019 年より浦幌町地域おこし協力隊うらほろスタイル担当として移住。町の中高生が行う地域を舞台とした活動団体「浦幌部」のサポートや社会教育の場づくりなどを行う。3年の任期を終え、事業を連携して行っていた「十勝うらほろ樂舎」に2022年4月より入社。
古家具や器が好き。好みのものに出会うと「かわいい」しか語彙が無くなる。今年は陶器窯に行ってみたい。

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